研究概要 |
新製品開発が食品産業の競争構造に及ぼす影響について、納豆および牛乳の2産業を例にとり、実証的に分析を行った。 まず納豆産業については、納豆6製品を対象に、吸引力型モデルと呼ばれる市場シェア・モデルを推定し、製品間の交差価格弾力性を求めることにより、国産大豆納豆や有機大豆納豆が、輸入大豆を使用して低価格を売りにした「レギュラー納豆」とどのような競合関係にあるのかについて明らかにした。これらの成果については、「納豆産業における戦略グループ間・グループ内部の競合分析」,『農業経営通信』,「国産原料製品と輸入原料製品との間の競合関係:納豆を事例として」,「吸引力型モデルを用いた交差価格弾力性の推定:納豆を事例として」等の論文で公表した。 一方、牛乳については「おいしい牛乳」と「メグミルク」の2つの新製品を題材に,スキャンパネルデータを用いた牛乳製品の離散選択モデル分析を行った。その結果、牛乳消費において,消費者選好の異質性が存在していることを統計的に確認した。すなわち、4つのクラスの存在を仮定して分析した結果,価格に敏感で探索的傾向が強く消費者の大部分を占めるクラスI(一般層),少数であるが製品の高価格を受容し,購入確率も高いクラスIV(ロイヤル層),および,そのどちらにも属さず,両者の中間的な特徴を示すクラスII・III(中間層)が存在することが明らかになった.さらに,従来のように先見的に何らかの変数を指標とするのではなく,パラメータの推定値と消費者の購入履歴からベイズの定理を用いて消費者のクラス分けが可能であることを示した.これらの成果は、「食品安全問題による個別消費者選好の変化」『日本農業経済学会論文集』において公表した。
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