研究概要 |
アルツハイマー病研究では、アミロイドβ蛋白(Aβ)の脳内蓄積機構の解明が重要な課題となっている。Aβは、APPが、βとγセクレターゼによって切断を受けて産生されるが、その制御機構の詳細は不明である。本研究は、Aβ産生調節機構を明かにすることを目的に、我々が独自に開発したAβ産生制御因子スクリーニング法(Komano et al.,J.Biol.Chem.277:39627,2002)を駆使し、これら因子を同定し解析することである。昨年度は、この方法により同定したHerpの解析を行った(Sai et al.,J.Biol.Chem.277:12915,2002;Sai et al.,FEBS Lett.553:151,2003)が、本年度は、(1)新たに同定した他の因子の解析、および、(2)γセクレターゼ活性を担う家族性AD原因遺伝子産物プレセニリン(PS)を含むPS複合体による活性制御機構の解析を行い、以下の成果を得た。 (1)γセクレターゼ活性を劇的に制御するエンドソーム膜輸送に関与するSKD1を新たに同定した(参考論文、Yoshimori T et al.,Mol.Biol.Cell.11:747,2000)。申請者らは、SKD1のもつATPaseモチーフのドミナントネガティブ変異体を細胞に発現させると、γ切断が促進されAβ産生が数倍に増強し、逆に野生型SKD1を過剰発現させると、γ切断が抑制されAβ産生は高度に抑制されることを見出した(投稿準備中)。 (2)PS複合体構成因子のうち、PEN-2が、Aβ産生に促進的に作用すること(Shiraishi et al.,J.Neurchem.90:1402-1413,2004)、および、PSの、最もC末端側の第8膜貫通領域が、C末端配列を介してPS複合体形成に関与し、γセクレターゼ活性の制御に重要な役割を担っていることを明かにした(Shiraishi et al.,投稿中)。 現在、HerpおよびSKD1の機能と活性型PS複合体形成機構との関連をさらに詳細に解析をすすめている。
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