研究概要 |
肝がんに高発現している遺伝子metallo-beta-lactamaseファミリーであるHSCOの機能を解析したところ、DNA damageにおいて、RelA(p65N2FkappaB)依存性p53の活性を抑制して、抗アポトーシス作用を発揮すること、が明らかになった(Cancer cell, 2002,)。肝がん細胞に高効率で遺伝子を発現させるためのレトロウイルスのLTRを同定し(Mol Ther, 2003,8)、以下の実験をおこなった。HSCOのミュータント分子(deltaN、deltaCなど)を肝がん細胞株に強発現させることにより、細胞死が誘導された.HSCOミュータントによる細胞死は一部、caspase3、PARPの活性化を伴ったアポトーシスであった。HSCOミュータント分子は細胞質に大きな凝集体を形成した。プロテアソームインヒビターの共存により、凝集体形成と細胞死は促進された。nocodazole処理、pan-caspase-inhibitor処理では、それぞれ、凝集体形成、細胞死が抑制された。この細胞質内凝集体には免疫染色により、ユビキチン、分子シャペロンhsp70、Apg-2、プロテアソームサブユニットalpha2、beta1がco-localizeしており、アグリソーム(aggresome)の定義に一致した。HSCOミュータント分子はポリユビキチン化され、TritonX-100不溶性分画に存在した。最近、HSCOはある遺伝性代謝性疾患の原因遺伝子であることが報告された。変異をもったHSCOの一部はアグリソームを形成するので、この疾患における神経筋変性の原因はアグリソーム形成による可能性がある。HSCOによるアグリソーム形成は、肝がんで過剰発現する分子シャペロンhsp70、Apg-2により、抑制された(FEBS Lett、200)。野生型のHSCOも過剰発現とプロテアソームインヒビターを組み合わせると、アグリソームを形成した。HSCO分子は相互作用するHDAC分子の機能を促進し、綱胞内タンパクのアセチル化状態を変化させて、アグリソーム形成過程に関与している可能性がある。HSCOミュータント分子によるmicro-aggregates形成が細胞死とリンクしており、アグリソーム形成は細胞にとって、protectiveな意味をもっていることが示唆された。細胞質内凝集塊形成によるタンパク分解機構(ユビキチン-プロテアソームの系、オートファジーの系など)への影響について、検討中である。
|