研究課題
萌芽研究
ウイルス感染防御においては、CD8陽性細胞傷害性Tリンパ球(CTL)がウイルス産生細胞を破壊し、中和抗体が感染の拡大とウイルス粒子除去に関与すると信じられている。このため、ワクチン開発に当たって、CTLとウイルス中和抗体の誘導が重要な指標とされることが多い。我々は、免疫系の完成した成体マウスへの接種により致死性赤白血病を誘発するフレンドレトロウイルス(FV)を用い、FVに感受性の高い(BALB/c × C57BL/6)F_1マウスに、β2-ミクログロブリン遺伝子欠損をホモ接合で導入して、CD8陽性細胞を欠く系統を育成、これと野生型F_1マウス、及びBリンパ球を欠く免疫グロブリン遺伝子膜貫通エクソン欠損マウスを用いて、ペプチドワクチンによる感染防御実験を行った。ウイルス被膜タンパク質上のCD4陽性Tリンパ球認識エピトープを単独で含む合成ペプチドで、一度だけ免疫することにまり、野生型マウスの80%以上でFV誘発白血病が予防できた。驚くべきことに、CD8陽性Tリンパ球欠損F_1マウスでも、その約70%がペプチドワクチン免疫によりFVに抵抗性となり、感染後の脾腫発症・死亡率は、免疫した野生型マウスと有意差がなかった。しかし、Bリンパ球欠損マウスでは、ペプチドワクチンで白血病死を防止できなかった。ペプチド免疫マウスでは、CD8陽性Tリンパ球非存在下でも、FV感染4週間後までに骨髄および脾からウイルス産生細胞が排除された。一方、Bリンパ球欠損マウスでは、感染初期のウイルス産生細胞数増加は抑制されたが、感染2週間目以降はワクチンの効果が見られなかった。以上から、CD4陽性Tリンパ球認識抗原エピトープを用いてフレンド白血病ウイルスに対する感染防御を誘導する系に関しては、CD8陽性細胞傷害性Tリンパ球は感染防御に必須ではないことが明らかとなった。
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