研究概要 |
骨髄単核球には内皮系特性を持つ幹細胞群が存在する。この内皮系細胞は虚血部位に移植されるとVEGF・bFGFなどの血管新生因子を供給するとともに、成熟内皮細胞へと分化する。私達はこの骨髄細胞移植を血管新生治療として確立してきた(Lancet 2002;360:427-435)。この内皮系細胞はL-selectin,β1-integrinなどの細胞接着因子のほか内皮細胞表面マーカー群やeNOS,CNPなどの血管平滑筋細胞(VSMC)増殖抑制因子も発現する。このことは内膜傷害血管において骨髄幹細胞が傷害部位に接着し内皮再生→新生内膜増殖抑制を発揮する可能性を示唆する。ラット頸動脈バルーン傷害モデルを用いた基礎実験により、骨髄内皮系細胞の静脈内投与はケモカイン(MCP-1)存在下で投与された時のみ血管傷害部位に接着して、内皮再生→新生内膜増殖抑制を発揮し、マクロファージとしての血管内侵入はないことを見いだした。冠動脈硬化巣や虚血性心疾患症例では局所・血中MCP-1濃度が上昇していることを考えあわせると、これは自家細胞移植を用いた初めての再狭窄抑制治療となる可能性が示唆された。
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