研究概要 |
家族性パーキンソン病,ハンテントン病,マチャドジョセフ病,球脊髄性筋萎縮症などの神経変性疾患のトランスジェニック(Tg)flyモデルが作製され,病態の解析に大きな役割を果たしている。しかし、SOD1遺伝子変異による家族性筋萎縮性側索硬化症(FALS)では,神経変性や症状をおこすTg flyは未完成である.我々はALS研究を発展させる目的でGAL4-UASシステムによるfly modelの作製に着手した。このシステムでは、導入遺伝子の発現は酵母の転写因子GAL4により制御される。まず、種々のプロモーターにGAL4を連結したdriver lineとして、運動ニューロン特異的な発現をおこすD42-GAL4、eyeに発現するGMR-GAL4、末梢および中枢神経系の神経細胞に特異的な発現をおこすELAV-GAL4 lineを準備中である。driver lineと、GAL4標的配列のUASプロモーターにヒトSOD1 cDNAを連結したtransgeneを持つUAS-SOD1 lineを交配することにより、組織、細胞特異的にSOD1を発現するflyが得られる。UAS-SOD1 lineの確立に先立ち、UASプロモーターを持つpUASTベクターにA4V、H46R、G37R、G85R、I113Tといった、ヒトで様々な臨床重症度を示す変異SOD1 cDNAを連結した。現在、これらのベクターのverificationを行っている。Tg mouseでは、コストと解析時間の問題で、交配の組み合わせ数は限られたものにならざるを得ない。この欠点を克服するためにもflyは有用であり、我々は上記5種類のUAS-SOD1 lineと3種類のdriver lineを交配し、そのphenotype、細胞変性、異常蛋白の凝集の有無を解析する。一方、変異SOD1を特異的にユビキチン化するE3ユビキチンリガーゼDorfinは我々が発見した新規遺伝子であり、培養細胞レベルにおいて変異SOD1のtoxicityを抑制する。そこで、有用な変異SOD1 Tg flyモデル確立後、Dorfin Tg flyを作製し、両者を交配することによりphenotypeや細胞障害の改善を確認したいと考えている。この準備段階としてpUASTベクターにDorfin cDNAを組み込んだコンストラクトを作製中である。
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