研究課題/領域番号 |
15659240
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研究種目 |
萌芽研究
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
小児科学
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
伊藤 悦朗 弘前大学, 医学部, 教授 (20168339)
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研究分担者 |
佐々木 伸也 弘前大学, 医学部, 助手 (10344590)
土岐 力 弘前大学, 医学部, 講師 (50195731)
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研究期間 (年度) |
2003
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研究課題ステータス |
完了 (2003年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2003年度: 3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
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キーワード | Bach2 / Ph1陽性ALL / 薬剤耐性 / 化学療法 / 酸化ストレス / STI571 |
研究概要 |
フィラデルフィア染色体(Ph1)陽性急性リンパ性白血病(ALL)は極めて予後不良である。Ph1陽性ALLでは、BCR-ABLというキメラ蛋白が発症に大きく関わっている。最近、BCR-ABLチロシンキナーゼの特異的阻害剤、STI571が臨床応用され、Ph1陽性ALLでも有効性が示されたが、効果は一時的で抗癌剤との併用療法の開発が必要である。イギリスのグループにより、CMLのリンパ性急性転化細胞株ではSTI571よって著明にBach2の発現誘導がみられることが報告された。小児Ph1陽性ALLの有効な化学療法を開発するために本研究を行い、平成15年度は以下の実績が得られた。 1.方法 (Bach2の薬剤感受性に及ぼす影響の解析)Bach2を発現させたRaji細胞(Bach2陽性Raji細胞)と親株との抗癌剤感受性をMTT法とフローサイトメトリー(FCM)法(PI染色)で解析した。細胞株を抗癌剤存在下で培養後DCFH-DA染色し、FACScanにて細胞内酸化物と反応したDCFを検出した。細胞株を抗癌剤存在下で24時間培養し、細胞を固定。Bach2を抗Bach2抗体で染色し、蛍光顕微鏡で細胞内局在を解析した。 2.結果 Bach2陽性Raji細胞と親株の間でMTX、VCRに対する感受性の差が認められなかったが、VP16、DNR、Ara-Cに対してはBach2陽性Raji細胞の薬剤感受性が亢進していた。MTX、VCRを加えたときは、細胞内酸化物量に変化は認められなかったが、VP16、DNR、Ara-Cを加えると酸化物量の増加が認められた。カタラーゼ存在下の細胞にVP16、DNR、Ara-Cを加えたものは、カタラーゼ非存在下のものに比べ、細胞死の抑制が認められた。Bach2は、非抗癌剤存在下では細胞質に局在していた。MTX、VCR添加後では、Bach2の核内への明らかな移動が認められなかったが、酸化ストレスを誘導するVP16、DNR、Ara-Cにおいて、細胞質から核への局在の変化が認められた。 3.考案および結語 Bach2はPh1陽性ALLでSTI571によって誘導され、活性化酸素を誘導するタイプの抗癌剤によって核に蓄積し、細胞死を誘導する。したがって、Ph1陽性ALLの治療においてSTI571と活性化酸素を誘導するタイプの抗癌剤の併用療法は有用と思われる。
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