研究概要 |
核医学検査や核磁気共鳴による検査でしか得られなかった生体の機能情報をX線検査で得ようとする新たな分子イメージングのための薬剤開発を目的とし,安定同位元素を高感度に検出できる放射光X線検査である蛍光X線CTを念頭において,非生体構成元素(ヘテロ元素)導入型人工アミノ酸化合物の開発に着手した。 平成15年度は,4-Br-L-phenylalanine(Br-Phe)を満たしたキャピラリ状ファントムの走査によって,最小検出能及び空間分解能の向上には,SSDに混入する散乱X線の低減が必要であることが明らかになった。 (1)撮像系おけるパラメータの検討 最小検出能及び空間分解能は,入射X線断面積,被写体-検出器間距離,コリメータ形状等のパラメータに依存する。そこで,パラメータの種々の組み合わせについて,実際に蒸留水と1mMのBr-Phe溶液に単色X線を照射し,計数実験を行い,最適なパラメータを検討した。そのパラメータでキャピラリ状ファントムを走査した結果,最小検出能及び空間分解能が向上したことが確認できた。 (2)アクリルファントム撮像 最小検出能,定量性及び均一性を評価するために,Br-Phe(1,10,50,100,200,500,1000μM)を封入したアクリル製の板状ファントム(37×37×5mm^3)を撮像した。その結果,Br-Phe濃度とカウントとの間には良好な直線関係が見られた。カウント値からBr-Phe濃度が推定でき,本システムにより,定量解析が可能と考えられる。撮像したファントムのBr-Phe領域のカウントは,6543±613で,不均一性は9.4%であり,最小検出濃度は40μMであった。 (3)担癌マウス切片撮像 ヒト大腸癌株化細胞を移植したマウスに10mMのBr-Pheを静注15分後に屠殺し,ホルマリン固定した後,約3mmの切片を作製し,撮像した。その画像において,腫瘍部位に集積した臭素の2次元的空間分布像が得られた。
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