研究概要 |
本研究では爆発的に増殖する肝上皮性幹様細胞の大量培養法の確立とそれを応用した人工肝臓の作成法を確立することを目的としている。本年度の研究実施計画としては1.爆発的に増殖する肝上皮性幹様細胞の機能細胞への分化誘導、2.肝上皮性幹様細胞の発現蛋白の同定の二つを目標にした。第1の目標に関しては、採取、分離した肝上皮性幹様細胞をラットの皮下に移植して肝細胞塊を形成させることに成功した。この細胞塊の病理学的所見では通常の肝細胞よりも小型の肝細胞が増殖し集塊を形成していた。免疫組織学的にはAFP、アルブミンは弱陽性に染まるが通常の肝細胞と比較すると弱いものであった。第2の目標の肝上皮性幹様細胞そのものをの免疫組織学的に各種抗体を用いて染色し発現蛋白を検討した結果はAFP陽性,CD34一部陽性,Flk-1強陽性,PECOM-1強陽性、CK7/17ごく一部陽性、Albumin陽性(核),von Willebrand Factors抗体は一部陽性であった。また、HE, PAS染色ではエオジン好性の細胞質、PAS陽性顆粒が認められた。肝上皮性細胞は幹様細胞の性格を持つことからヘリング管由来ではないかと考える説もあるが今回の検討でCK7/17は疑陽性なのに対し内皮細胞に認められるFlk-1、CD34,PECOM-1が強陽性であったことはこの細胞が内皮細胞系列であることを示唆するものと考えられた。この細胞にはVEGFのreceptorであるFlk-1が強く発現していることからVEGFを投与することにより劇的に増殖あるいは分化する可能性が示唆された。そして、この細胞を肝機能を発揮する肝実質細胞へ分化転換させることにより、人工肝臓作成へ応用できる可能性が示された。
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