研究概要 |
肺癌患者の予後を規定するのは遠隔転移である.血行性転移の原因として手術操作による癌細胞の主病巣から流血中への遊離と他臓器への着床もその一因として注目されている.肺癌患者の周術期に患者血中から遊離癌細胞を除去することは予後の改善に寄与する可能性が高い.しかし血中の癌細胞を特異的に除去する治療法は現在まで報告されていない.この研究の目的は血球や血管内皮細胞には存在しない上皮細胞に発現する複数の表面抗原をターゲットにした抗体を磁性粒子に固定化して血中に投与し,流血中の遊離癌細胞をマグネットカラムで吸着することが可能か検討することである.肺癌患者100例の原発肺癌組織を上皮細胞に特異的な表面抗原E-cadherin, β4 integrin, ICAM-1,Tissue Factor, β-cateninなどで免疫染色して,これらの表面抗原に対する抗体が癌細胞を特異的に認識するか検討した.また作成した抗体カクテルが生細胞を認識するか,肺癌培養細胞(A549,PC-9,LK-7,その他)を,抗体カクテルを用いて免疫染色し,flowcytometryにより陽性細胞の割合を検討した.その結果,癌細胞に特異的な抗体を特定することができなかった.また基礎研究として磁性細菌粒子のかわりに,粒子径が近いMRI用肝臓造影剤として使用されているフェリデックスをラットに投与し,その安全性を確認した.その結果特に異状を認めず安全に投与することが可能であった.
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