研究概要 |
我々は,enhanced green fluorecent protein(eGFP)発現遺伝子を導入したマウス胚性幹細胞(ES細胞)からマイクログリアの分化誘導法を確立した(J.Neuroimmunol.2005,160,210-218).マイクログリアへの分化誘導は,神経細胞誘導法である5-STEP法を一部改変した.Embryoid Body(EB)にbFGFを添加し,その後付着培養する際にGM-CSFを添加することによりマイクログリアを誘導した.FACS解析によりCD45^<low>,Mac1^+の細胞をマイクログリアとし,CD45^<hi>,Mac1^+の細胞をマクロファージとしたところ,誘導細胞はそれぞれ17%と2%であった.誘導マイクログリアのMHC,共刺激分子や接着分子の発現をFACSで解析すると,MHC class I, class II分子を発現しており,共刺激分子であるCD80,CD86やCD40の発現が認められた.また,IFN-g刺激によりMHC class IIとCD40の発現上昇もみとめられた.接着分子の発現は,脾臓マクロファージと比べほとんどが低く,CD31のみが高かった.また正常マウス尾静脈に誘導マイクログリアを移植すると,血液脳関門を通り抜け海馬,脳梁に移植細胞が遊走する事が確認された.しかし末梢の組織では,移植細胞はほとんど検出されなかった.さらに誘導マイクログリアを同様にグリオーマモデルマウスに移植すると,腫瘍組織に多数の移植細胞が確認された.この特性を利用して,細胞工学的改変ミクログリアによる中枢神経系疾患の治療法を開発している.
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