研究概要 |
自己組織から採取し、自己への応用を将来的に目指した、15代以上の継代が可能な体性幹細胞作製法の確立を目的として以下の検討を行った。 1.検討した細胞ソース A)皮膚:真皮層を含む皮膚片を細片化した後、培養皿へ付着させ接触部分からの細胞の移行を得た B)骨髄:大腿骨より骨髄を採取し、pipettingにより骨髄細胞を単離した C)小腸粘膜:十二指腸粘膜上皮をトリプシン消化した後、細胞を単離した D)胎盤・羊膜:コラゲナーゼもしくはトリプシン消化後、細胞を単離した E)肝臓:コラゲナーゼ灌流消化した後、比重遠心法により肝実質・非実質細胞分画に分離した F)膵管:膵をコラゲナーゼ消化後、膵管をピックアップし、ディスパーゼにて膵管上皮細胞を単離した 2.培養条件 A)基本培地:αMEM B)添加:leukemia inhibitory factor(LIF),B27,epidermal growth factor(EGF),fibroblast growth factor(FGF),10% fetal bovine serum(FBS) 3.結果 A)皮膚(全層)からは130回の分裂が可能な継代可能な細胞が得られた。この細胞は、凍結・解凍の処置を行っても増殖活性の低下は見られず、B27,EGF,FGF添加および無血清の培養条件において、Nestinに対して陽性の染色性を示し、体性幹細胞と類似した性格を有した。ヌードマウス皮下移植実験では、奇形腫の形成能を認めなかった。 B)骨髄、小腸粘膜、胎盤・羊膜、膵管由来の細胞からは、in vitroで増殖可能な細胞を獲得できなかった。細胞株化に至る培養条件、添加物のさらなる検討が必要である。しかしながら、胎盤由来細胞より、インスリン発現細胞への分化誘導に成功し、糖尿病細胞移植療法への可能性が示唆された。 C)肝非実質細胞分画より、in vitroで肝細胞特異的機能を保持したまま増殖可能な小型の肝細胞(小肝細胞)を得た。ラット70%肝切除モデルにおける倍数体および増殖性の解析により、肝臓におけるstem/progenitor cellとしての役割を示唆する結果を得た。 4.結語 A)全層皮膚からは、長期(130代以上)継代可能な類体性幹細胞を樹立した B)骨髄、小腸粘膜、胎盤・羊膜、膵管由来の細胞からの体性幹細胞の樹立には成功しなかった C)分離された小肝細胞は、細胞移植ソースとしての可能性が示唆された
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