研究概要 |
【目的】血球系幹細胞を持続灌流しながら卵巣組織を器官培養する系において,卵巣内の前胞状卵胞を体外発育させることができる至適条件を設定すること。 【方法】排卵周期を有しホルモン動態がヒトに近いラット卵巣を用いて基礎実験を行なった。3週齢の近交系SHR雌ラットから片側卵巣を摘出し、ビブラトームを用いて薄切した。さらに骨髄を採取し,密度勾配遠心法で単核球を分取した。骨髄単核球はStemPro-34 SFM mediumに浮遊させ,幹細胞の分化を抑制しながら冷蔵保存した。灌流培養の基本培養液としてはHAS, ITS, L-glutamine添加M-199を用い,これにrhFSH(Serono International, Geneva)を10 IU/Lの濃度で添加した。骨髄単核球灌流群と非灌流群の2群を設定し,それぞれパーフュージョンディッシュチェンバー(Ieda Trading, Japan)に薄切した卵巣組織を置き、上記基本培養液で持続灌流しながら培養した。持続的灌流には2台のペリスタルティックポンプを改造して用いた。冷蔵保存しておいた骨髄単核球は用時に基本培養液に再浮遊させ,灌流群ではパーフュージョンディッシュチェンバーの別のチャンネルから骨髄単核球浮遊液を灌流した。非灌流群では基本培養液のみを灌流した。 【結果】7日間,骨髄単核球浮遊液を灌流培養することにより,卵胞径の増大と卵胞腔の形成が認められた。しかし,結果に再現性が得られておらず,至適条件の設定にはまだ時間を要するものと思われる。また,ペリスタルティックポンプの回路が閉塞するなど灌流方法にも問題が生じており,培養方法の再検討も必要である。
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