研究概要 |
本研究では、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi ; histone deacetylase inhibitor)による子宮内膜症の新しい治療法の可能性に関する基礎的検討を行うことを目的とした。 まず正常内膜機能発現におけるヒストンアセチル化の役割について検討を行ったところ、HDACiが性ステロイドホルモン依存性分化を促進すると同時に、性ステロイド依存性のコアヒストンアセチル化を増強し、その作用点が分化マーカーであるIGFBP-1プロモーターのプロゲステロン応答エレメント近傍であることを明らかした(参考文献1)。 次に、内膜症組織検体の希少性および不均一性の点から予備実験に十分な検体の確保が難しいと判断し、内膜症の類腫瘍的特性を鑑み高分化型内膜癌細胞Ishikawaでまず予備検討を行うこととした。その結果、Ishikawaにおいて、各種HDACi(TSA、SAHA、SBHA、HC toxin、Scriptaid、Nullscript)、特にTSAおよびSAHAは、内膜腺細胞の分化マーカーであるglycodelinのmRNA発現を時間・濃度依存性に誘導した。またHDACiは、性ステロイドによるglycodelinの誘導発現を増強した。TSA、SAHAはいずれも濃度依存的に細胞増殖を抑制すると同時に、anchorage independent assayでは形成されるコロニー数の減弱を示した。Trans-well assayおよびwound healing assayを用いることにより、HDACiがIshikawaの運動能・浸潤能に影響を及ぼすことが明らかとなった。 1.Sakai N, Maruyama T, Sakurai R, et al.:Involvement of histone acetylation in ovarian steroid-induced decidualization of human endometrial stromal cells. J Biol Chem.2003:278(19),16675-16682.
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