研究概要 |
肥満細胞は、アレルゲン暴露によって生じる即時相の反応においてもっとも重要な役割を果たす。このため、我々はアレルギー性結膜炎モデルにおける即時相の反応をトランスクリプトームの観点からnetworkモデルを用いて解析を行ってきた(投稿準備中)。その結果、即時相反応においては多くのm-RNAがnetworkとして変動をおこすことが判明したが、肥満細胞の脱顆粒のレベルと関連づけられるnetworkは興味深いことに68にものぼるcanonical signalingに分類された。中でも上位を占めたのは、上から順にEGF, IL-2, JAK/Stat, Neurotrophin/Trk, FGF, PDGF, chemokine, TGF-β, PPAR, VEGFとなった。一方、アトピー性皮膚炎のモデルマウスであるNC/Ngaにおいては、即時相反応の増悪、肥満細胞関連性パラメーターの増強をきたすことが判明した。そこで、NC/Ngaにおける即時相のnetworkを同様に解析してみた結果、とくにmast cell proteasesや高親和性IgEレセプターといった肥満細胞特異的因子に加え、ケモカインsignalingに関連づけられる多くの因子の顕著な変動を認めた。これらの検討をふまえ、我々はマウス結膜より肥満細胞を分離してphenotypeの解析、ケモカインに対する反応性の検討を始めた。その結果、結膜肥満細胞は多くのケモカインレセプター発現を示し、それらの発現は細胞表面の高親和性IgEレセプターと関連していた。また、分離した肥満細胞は、肥満細胞欠損マウスに移入すれば即時相反応を誘導することが可能であった。以上により、in vitroにおけるシグナリングの検討のみならず、それらをin vivoで検証することができる系を構築できたため、さらに解析を進めつつある。
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