研究分担者 |
田中 紀章 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (10127566)
滝川 正春 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (20112063)
久保田 聡 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教授 (90221936)
大山 和美 岡山大学, 歯学部, 教務員 (00253021)
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研究概要 |
(1)前年度までの研究でヒトテロメラーゼ遺伝子(hTERT)による不死化間葉系幹細胞クローンを数多く樹立,解析してきたが,その中で唯一クローン12が骨軟骨へと分化し得た.そこで本年度はエピジェネティックな解析を含め,さらなる解析を本クローンに絞って行った. (2)hTERTを用いた上記のin vitroの検討結果を援用しin vivoで骨髄から幹細胞を引き出して組織再生を行う方法を検討した.クローン12では血管内皮細胞増殖因子(VEGF)などの多くの増殖因子遺伝子の発現がみられたので,まずは多くの増殖因子と相互作用をもち,間葉系組織の成長分化を幅広く促進する結合組織成長因子(CTGF)を試用した.すなわちこれを徐放性担体に適用し,ラット膝関節に作成した軟骨全層欠損に封入した.全層欠損を作成したのは組織再生を間葉系幹細胞に期待したからである.その結果CTGFを封入した場合ほぼ完全な軟骨組織の再生が観察された.これに対し対照群では全く軟骨組織が形成されなかった. (3)2の結果から間葉系幹細胞の軟骨再生能力が示唆されたが,これをさらに検証するためマウス骨髄幹細胞を採取し,それがCTGFのもと硬組織再生を行いうるかをin vitroで検討した.マウス骨髄幹細胞を長期に維持し,CTGF存在下・非存在下で軟骨細胞分化初期マーカーであるsox9遺伝子および骨芽細胞分化マーカーであるcbfa1/runx2の発現を定量した.その結果CTGF存在下で骨髄幹細胞は軟骨細胞に分化するに並行して,骨芽細胞へも分化しうることも明らかとなった.以上に関連して,cbfa1ノックアウトマウス胎児におけるctgfの発現パターンを解析したところ,本来発現のみられる歯牙形成や骨化に向かう部分にctgfの発現は見られなかった.以上の結果は,幹細胞からの硬組織再生における両遺伝子の協調的役割を示すものである.
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