国立大学附属病院が独法化されるにあたり、歯科口腔外科の戦略的な運営方針(スケールメリット)を立案する目的で、他科との比較でも診療収益が低く、入院との比較でも収益性の悪い外来診療部門での分析を行った。 まず、任意の2週間を設定し、診療に携わる教室員全体の外来診療に携わる時間を測定した。また外来部門では、診療行為を1)口腔外科、2)保存、3)補綴、4)矯正の4部門に大別し、単位時間あたりのレセプト点数の平均値を100とする相対係数を算定した。さらに口腔外科に関しては、埋伏抜歯、顎関節症、唇裂・口蓋裂、腫瘍、嚢胞、顎変形症に細分化し、それぞれの効率も比較検討した。結果は以下のごとくであった。 (1)口腔外科に関しては全体の係数が123.5であり、特に智歯抜歯の効率が高く(係数191.0)、経営上、とりわけ医学部附属病院での症例を増やすべき疾患であると考えられた。嚢胞も比較的高かった(係数145.3)。 (2)腫瘍は、単位時間あたりの診療単価(係数205.3)が最も高かった。しかしながら画像診断、検査および投薬にかける割合も大きいと思われ、単純な手技料/技術料に相当する部分が少なかった。 (3)唇裂・口蓋裂、顎関節症、顎変形症は係数は平均値の100を下回っていた。 (4)補綴治療は、診療効率も悪く(係数40.6)、これは診察時間の遷延化によると考えられた。診療時間の短縮の必要性が求められた。 (5)保存治療は件数も少なく、診療効率も悪かった(係数20.3)。 (6)最も外来部門で収益面から診た診療効率の高かったのは矯正部門であり、係数は231.2であった。なお、今回は保険内のみでの算定でありさらに保険外での項目も含めるとさらに係数が上昇すると思われた。 今後の医学部歯科口腔外科の戦略的な運営方針について (A)埋伏抜歯や嚢胞などの外来小手術の件数を増やし、(B)採算性の良い矯正部門の患者増をはかり、(C)保存、補綴部門では、診療時間の短縮あるいは技工物の外部委託などで省力化をはかっていくことが経営改善につながると推察された。
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