研究概要 |
今回,日本に滞在する外国人研修員を対象に,異文化ストレスに関する実態を明らかにし,その関連要因について検討する事を目的に本研究を行った. 1.研究方法 平成15年5月に日本に滞在していた外国人研修員に自記式質問紙を配布(370名回収.回収率47.8%).質問紙は(1)対象者の背景、日本での生活に関連した困難度についての質問7項目,(2)GHQ28 (General Health Questionnaire,精神健康調査)の2部構成とした. 2.結果 対象者の平均年齢は34.7歳,滞在日数は平均1ヶ月であり,半数は今回が初めての海外滞在経験者であった.滞在中の生活に関する困難度は,コミュニケーション,食事,ホームシックの順で高く,住居環境,研修コースに関しての困難度は低かった.GHQスコアの平均点は1.69(標準偏差2.78)で,既存の調査(Goldberg,1988)の正常値群と比較しても,ストレス度は低いと考えられた.また,滞在日数が長いほどGHQスコアが低い傾向が見られた. ストレス度が高いグループに着目すると,平均年齢が比較的若く,生活に関連した7項目の総得点で困難度が高かった.また下痢,便秘,胃痛などの消化器症状がみられ,一ヶ月以内に家族の死,家族や自身の病気やけがを経験した者は,GHQスコアが高い傾向にあった.飲酒や喫煙状況の変化はストレスが高い場合もあまり変化はみられなかった. 3.考察 今研究の対象者は,既存の研究と比較するとストレス度は低いと考えられた.しかし,コミュニケーション,食事などで滞在生活に困難さを感じており,ストレス度とも関連がみられた.また,不眠や下痢,便秘,胃痛などの消化器症状は,ストレス予測の重要な指標となることが示唆されたことにより,今後はライフイベント情報の把握とともに,これらの予測因子に対する対応が必要と考えられる.
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