研究課題
若手研究(A)
目的:視床投射神経細胞には、末梢からの感覚情報を受け取る上向性シナプスと大脳皮質からのfeedbackシナプス(皮質視床シナプス)の二つの主な興奮性シナプスが存在している。両シナプスは生理機能的にそれぞれ、driverとmodulatorとして働いていると考えられているが、そのシナプス基盤は明らかでない。我々は、それらのシナプス特性を詳細に解析し、特に、グルタミン酸受容体の構成成分に着目し、カイニン酸受容体電流の解析と、その機能的意義について解析した。成果と考察:以下のことが明らかになった。1.視床シナプスEPSCではカイニン酸受容体成分が存在するが、内側毛帯シナプスには存在しない。2.皮質視床シナプスEPSCはNMDA受容体成分がAMPA受容体成分より極めて多く存在するが、内側毛帯シナプスEPSCではその逆である。3.皮質視床シナプスではlate-persistent発火を示すが、内側毛帯シナプスではonset-transient発火を示す。4.皮質視床シナプスのlate-persistent発火の形成はNMDA受容体に大きく依存し、カイニン酸受容体は修飾的な作用がある。内側毛帯シナプスのonset-transient発火の形成はAMPA受容体に主に依存している。投射細胞はT-typeカルシウムチャンネルにより、発火モードを過分極の場合(-70mV以下)はバーストモード、脱分極の場合(-50mV付近)はトニックモードに変化する。そして一般的に、トニックモード時に末梢からの感覚情報を正確に大脳皮質に伝えるとされている。以上の知見と今回の結果を総合的に考えると皮質視床シナプスEPSCは比較的キネチックスの遅い、NMDA受容体やカイニン酸受容体成分が有意に存在することから、大脳皮質は高頻度で活動すれば、投射神経細胞に対して、ゆっくりとした脱分極を惹き起こすし、バーストからトニックモードに移行するように働くと想像される。一方、内側毛帯シナプスはキネチックスの早いAMPA受容体成分が多いため、末梢からの情報をタイミングを合わせて情報を大脳皮質に伝える働きをしていると考えられた。この研究成果は現在J.Physiol.に投稿中(under revision)である。
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