研究課題
若手研究(A)
低速電子回折を用いた迅速で正確な表面結晶構造解析法を確立した。その結果、金属及び半導体表面において、比較的複雑な表面構造に対しても構造決定が可能であることを示すことができた。金属表面の場合、2種類の異なる吸着原子を含むような複雑な系でも構造決定が可能になった。共吸着構造は構造解析のデモンストレーションというだけでなく、吸着原子問の相互作用を理解する上で重要な研究課題である。本年度はCu(001)表面上のBiとMg、SbとMg、MnとBiの共吸着構造を決定することができた。これにより、吸着金属原子間の強い相互作用を見出すとともに、吸着原子の組み合わせと被覆率の調整によりさまざまな表面周期構造を作り出すことができることがわかった。半導体表面においても多くの構造の解析を進めることができた。本年度はタリウム、ナトリウム、カルシウムなどの吸着構造を解析・決定した。その結果、半導体表面の金属原子吸着においては純粋な共有結合やイオン結合では説明できない結合状態をつくる場合が数多く存在することが明らかになった。また、半導体表面の低速電子回折による構造解析の場合、バルク結晶位置からの原子のずれが大きく内部にまで及ぶ。本研究における構造解析の結果、Si(001)清浄表面の場合、8層目まで構造解析の結果に関与することがわかった。さらに、40K以下の低温においてSi(001)表面のダイマーのフリップフロップ運動が電子線などにより効率的に励起される現象を詳細に解明し、最近、走査トンネル顕微鏡などの観察により議論が活発になったSi(001)表面の最安定構造に対する問題に終止符を打つことができた。電子線強度やエネルギーに対する回折スポット強度の測定から、電子線による励起過程のモデルを構築する事ができた。また、ドーパントの種類や濃度の異なる試料を用い、モデルの検証を行うことができた。
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