研究課題
若手研究(A)
本研究は労働市場を規制する法政策の実効性を高めるための理論構造を探求するものである。1.平成17年度は、労働市場における労働契約成立のプロセスを分析したうえで、雇用政策の法規制が個別契約にどの程度関与し、これを統制すべきかの観点で分析を進めた。日本における最近の構造改革は労働市場領域にも及び、労働者の個別処遇の進行と紛争処理の増加を背景に、私人間における法関係の安定を目指す労働契約法制等の制定が間近に迫っている。そこで労働契約法制の構造を調査分析し、契約の深化を通じた関係構築と紛争処理基準の確立の法政策について、まず研究報告をまとめ、これを共著作として出版した。同時に、若年者の雇用社会への参入と、労働契約の理解の仕方について、市場取引当事者の法的義務ないし責務の所在について、論稿をまとめた。2.1の作業と同時に、本年度は労働市場への参入、取引、あるいは契約成立の斡旋等に関する諸策の原理的考察を進めた。雇用政策の法は、これまで当事者への奨励、インセンティブ付与、規制逸脱者へのサンクション設定に工夫をこらすという手法を採用してきた。しかし最近では、労働市場の行動が、株式市場における評判と連結し、株価の上下を引き起こす事態となっており、つまり取引行動の基準化と、法順守の態様が重要視されている。そこで、労働市場における統制の新しい手法として、コンプライアンス、あるいは企業の社会的責任の類型に関する試論構築に取り組み、従来型手法との比較検討に着手した。この作業は、年度末に論稿をまとめ、他大学のCOEのプログラム内で発表、公刊が予定されている。3.日本における労働市場法の統制スタイルは、公法的な手法が用いられ、最大刑として拘束、懲役および罰金等のサンクションが課される。対して米国連邦法では、民事罰と私法手続きを容れた行政制裁による実行策による統制手法が採用されている。本年度は、行政制裁の運用メカニズムの不明点をなお探求し、これを日本における新しい個別紛争処理法制との比較検討を通じて論稿にまとめる作業を進めた。行政制裁の可能性と、労働審判廷にみる法実効性の異動と展望に関して、本研究の遂行過程が準備となったことになる。
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人文社会論叢(社会科学篇) 第13号
ページ: 10-10
人文社会論叢社会科学篇(弘前大学人文学部紀要) 13号
ページ: 25-35
日本労働法学会誌 104号
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日本労働法学会誌 103号
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弘前大学経済研究 27号
ページ: 94-95