研究課題
若手研究(A)
昨年度までの観測では、約180kmの距離で原子炉ニュートリノ観測数が欠損すること、そしてエネルギースペクトルに歪みが生じることを発見した。また、距離÷エネルギーによる変換で、ニュートリノ振動の特徴的な振る舞いである生存確率の減少復元の繰り返しの観測に成功した。これらの成果により、ニュートリノ質量および混合角が精密に決定され、766.3トン・年のデータ解析では、質量の2乗差・混合角およびそれらの1パラメータ誤差として、Δm^2=7.9^<+0.4>_<-0.3>×10^<-5>eV^2およびtan^2θ=0.40^<+0.07>_<-0.05>を得た。本研究により、数桁にわたり未定であった質量2乗差が5%程度の高精度で決定できたことは特筆できる。さらなる改善には、有効体積の決定精度および^<13>C(α,n)^<16>O由来のバックグラウンドの低減、および有効体積の拡大が有効である。本年度は、カムランド検出器内の任意の場所に放射線源を配置させる全位置較正装置を導入しテストデータの取得を行った。また、α線源除去のための蒸留装置の開発を行い、主要なバックグラウンドを5桁も減らせることを実証した。蒸留装置の導入は将来の精度向上に加えて、低エネルギー太陽ニュートリノの実時間測定という新しい物理研究も可能になる。また、解析手法をさらに改良し全体積での原子炉ニュートリノ観測を可能にし、観測継続により誤差を数分の1にできる下地を作った。さらに、ニュートリノ伝搬の理解に至った本研究成果の応用として、ニュートリノをプローブとした世界初の地球内部放射性物質由来のニュートリノ観測に成功した。これにより、地球の形成・進化モデルを検証する上で重要となる地熱に対する情報が、全く新しいニュートリノを利用した手法で得られることを示し、「ニュートリノ地球物理」を創出した。
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