配分額 *注記 |
23,920千円 (直接経費: 18,400千円、間接経費: 5,520千円)
2005年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2004年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2003年度: 14,300千円 (直接経費: 11,000千円、間接経費: 3,300千円)
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研究概要 |
外部電場の印加に伴う赤外吸収スペクトルの変化を検出する赤外電場吸収スペクトル測定システムを製作し,タンパク質をはじめとする凝縮系の巨大分子に応用することを目的としている。本年度は,昨年度測定したα-ヘリックスを示すポリペプチドであるポリ-γ-ベンジル-L-グルタメート(PBLG)の高分子薄膜の赤外電場吸収スペクトルの理論解析を行なった。またPMMAなど他の高分子薄膜の赤外電場吸収スペクトルの測定も同様に行い,さらに赤外電場吸収用の溶液セルを製作し,溶液系への応用も行った。PBLGの赤外電場吸収スペクトルにおいて,各振動バンドは,ゼロ次微分,一次微分,二次微分の線形結合の形を示し,Liptayらによる理論式を用いて再現することができた。振動励起に伴う双極子モーメントの変化(Δμ)は,二次微分の項から求めることができる。N-H伸縮(アミドA)振動,アミドI振動,側鎖のC=0伸縮振動バンドのΔμ値は,それぞれ0.11,0.05,0.06Dであった。他の振動バンドのΔμ値は0から0.03Dの範囲であり,アミドA振動のΔμ値が非常に大きいことがわかる。振動の非調和性の理論から,アミドA振動の大きなΔμ値は,アミドA振動の非調和性に由来することがわかった。一次微分の項から振動励起に伴う分子分極率の変化(Δα)を求めることができ,側鎖のC=0伸縮振動バンドが最も大きく約2.0Å^3であった。このC=0伸縮振動バンドの大きなΔα値は,PMMA薄膜においても同様に観測された。ゼロ次微分の項は外部電場による高分子の配向変化を表しており,PBLGについては,側鎖の振動バンドが骨格の振動バンドよりも大きな値を持つことがわかった。この結果は,電場によって骨格よりも側鎖が大きく配向しているを示している。この電場による配向変化が高分子の配向分極となることから,側鎖の配向変化が,PBLGの誘電率の値に大きく寄与していることがわかる。赤外電場吸収スペクトルの測定は,高分子の誘電率を分子レベルで調べる有効な手法であることがわかる。
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