研究課題
若手研究(A)
蛍光X線ホログラフィーは、測定されたホログラムをフーリエ変換的な手法により一義的に原子配列を求める構造解析法であるが、従来のアルゴリズムでは多くの虚像が出現することが問題点であった。従って、本年度は新しい原子像再生アルゴリズムの開発を重点的に行った。一つは、昨年度提案した逆フーリエ変換解析法を応用し、抽出したホログラムの振動パターンを基に、ホログラムデータをフィッティングし最終的には原子像を求める方法である。まずは、12.0、12.5、13.0keVのX線による金単結晶の蛍光X線ホログラムを計算し、本手法の実行可能性を評価した。フーリエ変換法では、エネルギーが低いことやホログラムの数が少ないことから、殆ど原子像は再生されなかったが、本手法を適用することにより、ほぼ完全に本来の原子配置を再現した。また、同じエネルギーのX線によって測定した金単結晶の実験ホログラムに適用し同様の結果を得た。このため、実験データに対しても十分適用可能であることが分かった。他にも、GeやZnTe単結晶の蛍光X線ホログラムに対して本手法を用い解析してみたところ、ホログラム振動の減衰率は試料や元素によって大きく変わり、温度因子が大きく関っていることが判明した。次は、従来、光電子ホログラフィーで成果を挙げてきた最大エントロピー法を用いたフィッティングアルゴリズムを蛍光X線ホログラフィーに適用した。従来のアルゴリズムは単一エネルギーホログラムにしか適用できなかったため、それを多重エネルギー用に改良した。ここでも、12:0、12.5、13.0keVの金単結晶ホログラムのデータを用いて、アルゴリズムの評価を行い、良好な原子像を得ることに成功した。処理に莫大な時間を要するため、東北大学の大型計算機センターで動作できるようプログラムを作成している。
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