研究課題
若手研究(A)
平成15年度に開発した遠心分離機を用いた肝細胞播種方法により肝細胞を固定化した塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)徐放性スカッフォルドを70%肝切除直後のラット腹腔内に移植した。移植1週間後には、bFGFを含まない対照群と比較してbFGF徐放性スカッフォルド内部への血管新生は2倍に増加し、さらに、生着肝細胞数は20倍以上であった。また、ヘマトキシリン・エオジン染色およびパス染色を用いた組織学的評価により、これら肝細胞は形態的にも機能的にも肝臓の特徴を保持していた。しかしながら、上記の体内新生肝臓組織は生体肝臓に比べて肝細胞密度がはるかに及ばないものであった。これは血管新生までに週単位の時間がかかることと、新生した血管密度が生体肝臓のそれよりもはるかに低いことに起因している。そこで、生体由来のヒドロゲルを用いた血管構造体基材を開発し、このヒドロゲルスカッフォルドと血管内皮細胞を用いた毛細血管網構築を試みた。スカッフォルドによる小血管構造体構築と培養液の流通実験に成功すると同時に、ヒドロゲル内への血管内皮細胞の緻密な浸潤が確認でき、毛細血管網構築の可能性が示された。さらに、独自に開発した培養培地を用いることで、従来、オルガノイドと呼ばれる三次元細胞集塊培養以外では困難であった肝細胞の生体外機能発現と維持が可能となった。一方、肝細胞と骨髄細胞群との共培養によるさらなる肝機能発現とその維持を可能とした。これらの成果から、生体外において血管網を有する肝臓組織体の基本構造を構築し、生体内へ適用可能な完全置換型人工肝臓開発のための基盤技術が構築できた。さらに、当該技術は生体外における有用物質生産や薬物代謝シミュレーターへの応用も可能であると期待される。
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