研究課題
若手研究(A)
本研究では、歯の発生から脱落に至るまでの、糖鎖機能を解明することを目的としてきた。O型糖鎖結合蛋白であるアメロブラスチンは、ヘパラン硫酸プロテオグリカン結合領域を有し、そのドメインを利用して細胞接着活性をもつマトリックス蛋白として機能し、その結果、エナメル芽細胞の分化及び、エナメル質形成に必須の分子であることが、ノックアウトマウスの解析から明らかとなった。具体的には、アメロブラスチンはP27の発現誘導を行うことで、エナメル芽細胞の細胞増殖を停止、一方でMsx2などの転写因子発現を制御することで、直接的にアメロジェニンなどのエナメルマトリックスの発現制御をおこなっている可能性が示唆された。従ってアメロブラスチンノックアウトマウスでは、エナメル芽細胞の異常増殖と、アメロジェニンの発現減少、およびこれらに伴うエナメル質の完全欠失が認められた。また、本ノックアウトマウスでは、加齢とともに歯原性腫瘍の生じることから、アメロブラスチンは単にエナメル形成にもならず、口腔硬組織内の歯原性上皮腫瘍形成にも重要な分子であることが明らかとなった。細胞表面に存在する糖脂質は、様々な増殖因子受容体などの細胞表面局在や、そのシグナル制御に重要であることを明らかにしてきた。歯の発生過程において、この糖脂質の糖鎖構造を修飾するGD3合成酵素の発現に関して解析を進めてきた。その結果、GD3合成酵素遺伝子は、歯胚発生の初期過程において歯原性上皮細胞に強く発現し、その分化とともに発現が減少することが明らかになった。また、GD3合成酵素遺伝子を過剰発現させた歯原性上皮細胞では、細胞増殖因子によって誘導される細胞増殖が亢進することから、GD3合成酵素によって合成される糖鎖構造が、細胞の増殖・分化に重要な役割を演じていることが明らかになった。以上の結果から、糖鎖シグナルは、歯及び口腔硬組織形成過程において、必須のメカニズムであり、今まで未知の領域であった分野の開拓に貢献できたものと考えられる。
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