研究概要 |
平成16年度の研究計画は,前年度に開発した1)Grid適応のための性能改善支援ツール,および2)Gridシミュレータを性能改善支援システムとして統合し,インターネットを通じて無償配布を開始することである.この計画を遂行するために,本年度は前年度から連携している未来開拓学術研究推進事業「外科領域を中心とするロボティックシステムの開発」への性能改善支援システムの適用およびフィードバックを引き続き進めた.更に,実践的なアプリケーションとして,医用画像処理ソフトウェアをGrid上で動作させるための性能評価を行い,実用化の目処をたてた.双方で得られた研究成果は論文誌および国際会議において発表し,高い評価を得た. 1)に対しては,前年度に開発した性能予測ツールPerWizを改良し,より大規模なアプリケーションを扱えるようになった.PerWizは,並列アプリケーションの性能を改善するためにどのコードをどのように修正すべきか,という開発者の問いに直接応えることができる.改良部分の新規性は,この問いに応えるための必要十分な情報のみをアプリケーション実行時に記録することにより,記録量を削減することである.評価実験では,PerWizによる予測結果を変えることなく,性能予測のための記録量および実行時間を半減できた. 2)に対しては,前年度までに開発したモデルに加え,より高速に性能予測を行うためのシミュレータを開発した.開発したシミュレータは,マスタ・スレーブ型プログラムがグリッドにおいて主流を占めることに着目し,マスタ・スレーブ型プログラムの性能を高速に予測できる.この結果,マスタ・スレーブ数および性能のトレードオフをシミュレーションを用いて解析することを可能にした.また,予測した実行時間の誤差は実際の実行時間に対して10%以内であり,予測精度が十分高いことも確認した. これらの成果を基に,複数の医用画像処理アプリケーションの開発を支援できた.具体的には,3次元データの可視化や人工関節の可動域計算のためのマスタ・スレーブ型プログラムの性能向上に寄与できた.
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