研究概要 |
現在,屋内外で無線LANインターネット接続の実証実験が盛んに行われている.2.4GHz帯を利用する無線LANは,他の無線通信と違い免許不要で使用でき,安価に提供できる特徴をもっているが,海上における船間や陸船間での情報交換として無線LANの実用化には至っていない.しかしながら,瀬戸内海の様な沿岸や島が隣接している海域であれば,無線LAN基地局を設置し,海上でも容易に無線LANを構築することができる.すでに,比較的大きな船と陸上基地局の2点間の通信実験及び実用化は行われているが,小型船舶を用いたものはなく回線品質などの確認も行われていない.そこで,本研究では沿岸を航行する小型船舶を対象としたネットワーク基盤を提供するための基礎実験を行う. 本研究では,まず大島商船高等専門学校(山口県屋代島)周辺海域で無線LANの接続環境調査の基礎実験を実施し,その評価を行った.実験結果より,海上無線環境下において,気象条件の変化や通行船が障害物となることによって,通信品質の劣化および通信回線の切断が生じることが分かった.この問題を解決するため,不意な回線切断時や伝送遅延時に自動に新たな通信経路を確立し,通信を継続することができるモバイルエージェント技術の導入を考える.従来のクライアント・サーバ型(主にRPC : Remote Procedure Call)でデータの受け渡しをしていたのでは,そのデータ処理の間は回線切断をすることができず,ネットワークの伝搬遅延や不意な回線切断に柔軟に対応できない.モバイルエージェント技術はこのような処理を可能にする.さらに,これは代理人として動作することができるため,コンピュータに不慣れな船長でも安心して本システムを利用することができる.そこで本研究では,海上において実際にモバイルエージェントを用いた通信実験を行って基礎データを収集し,モバイルエージェント導入によって回線障害を補うことができることを確認した.
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