研究概要 |
本研究の目的は,大規模なシーンを構成するのに十分な量のデータをリアルタイムにレンダリングするための基盤となるソフトウェア(レンダリングエンジン)を構築することにある.本年度は,より物理法則に裏付けられた,写実的なシーン(特に動的なシーン)への寄与を,目的とした開発を行った.具体的には,以下の二つについて研究を行った. 一つ目として,物理学に基づいた,つまりシミュレーション計算が物理学的に正確であると裏付けられた複雑な大域照明計算を,リアルタイムシェーディング言語であるCg(C for graphics)を利用し,汎用的なグラフィックスハードウェアが備える頂点プログラム(vertex program)により,リアルタイムに処理するためのレンダリング技術を開発した.ここでの主な寄与は,前計算放射輝度伝達法(precomputed radiance transfer, PRT法)を基本とし,より一般的なシーンへのPRT法の応用である.本手法では,シーン内でのモデルの位置は固定という制限はあるが,大きさと形状に制限の無いライトをほぼ自由に動かすことができる.本手法では,既存研究では難しかった室内のシーンの表現を行うことができるようになった. 二つ目として,物理法則にもとつく大規模な動的シーンのインタラクティブなレンダリング技術を開発する.大規模シーンデータから簡略化四面体メッシュを自動的に生成し,物理法則に基づいた変形・移動を有限要素法により計算する.レンダリング時には,大規模シーンデータとマッピングを行うことで,詳細を保った物理法則アニメーションが可能となった.また,空間ハッシュ法を用いて衝突検出を高速に行い,さらに,前処理により予め簡略化四面体メッシュに表面からの距離場を与えておくことで,自己衝突および物体同士の衝突の応力計算を行った.
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