研究概要 |
最終年度である本年度は,認識処理に時間情報を積極的に導入し,自動的に環境に適応しながら認識を行う方法の研究を行った.まずはじめに,その基礎となる認識手法の研究を行った.実際の環境下では対象の向きは動的に変化するため,その対応が大きな問題となる.向きの変化では局所的な見えよりも局所パーツの配置が大きく変化するので,認識対象から切り出した局所特徴をうまく表現する特徴空間を作成すれば,向きにロバストな認識を行うことができる.しかし,認識対象から切り出した局所領域集合は一般に非線形となってしまう.これをうまく表現するために,カーネル主成分分析を用い,その空間とのマッチングにはCLAFICを用いた.これにより,正面と側面のような少ない枚数の学習サンプルだけから向きにロバストな認識が可能となった.提案手法では,局所特徴の重要度が基底の重みとして自動的に決まり,認識時に重みとして利用される.この成果を画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2005)及び国際会議(ICIP2005)で発表した. 次に,この方法を時系列での対象追跡問題に応用した.時間軸に沿って空間を更新していくことにより,認識に重要な局所特徴が自動的に変化する.そのため,隠れ等があった場合でもその部分の重要度が自動的に低くなり,対処できるのである.この成果を国際会議(ISOT2005)で発表した. また,顔認識の分野では,最近,時系列に沿って推論を深めていく方法の有効性が示されている.しかし,従来の時系列に基づく顔認識では向きの変化にうまく対処できないという問題点があった.そこで,カーネル判別分析を用いて向きの変化による非線形性を吸収し,得られた判別空間を用いて時系列画像の事後確率を推定した.これにより,向きの変化に依存しない時系列顔認識が実現した.この成果を国際会議(ICAPR2005)で発表した.
|