研究概要 |
本研究の大きな目的は,あるディジタル信号(例えば発話データや音楽CDデータ)を完全可逆な形式で記述可能なセルオートマトンのルール系列から生み出されるアトラクタ構造の特徴を解析することである.以下に与える成果を学術論文・国際会議で報告した. 1.セルオートマトンの各ルールが生成する状態がいくつの祖先を有するかについて研究を行った.その結果,Wolframの分類のクラス3のルール(カオス的ルール)のみ,祖先の数が1であるようなルールがあることが分かった.更に,このようなルールから生成される状態発展は,closed loopを形成することが分かった.一方,それ以外のルールの祖先も数は,0もしくは2個以上であった.これにより,このようなルールが,アトラクタダイナミックスを与えることが明らかになった. 2.何故祖先の数が2以上となるかについて研究したところ,境界条件を固定境界としていることが重要であることが明らになった. 3.1の結果をもとに,完全可逆記述を与えるルール系列がセルオートマトンの状態空間にどのようなパス(経路)を与えるかを明らかにした. 4.離散状態であるセルオートマトンを連続状態へ一般化した場合の一例として考えられる,ロジスティック写像のパラメータを時間的に変化させることのダイナミックスへの影響を研究した.これは,ルールを時間的に変化させることに対応すると考えられる.
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