研究概要 |
画像・信号修復の統計力学的な解析に関する研究、および、神経信号の計測時に用いられる多重電極センサから得られる信号解析方法の統計力学的な評価を行った.今年度も昨年度に引き続き,多重電極による信号解析に関する研究において対数線形モデルを用いたスパイク状信号の解析手法を中心に研究を行った.研究のメインとなる軸はベイズ推定に基づく信号の統計力学的な議論に有り,様々な方々と有意義な議論を行った上で研究を遂行した.対数線形モデルは質的情報の多変量解析を行なう場合に用いられるモデルであり,様々な分野において応用が試みられている.一方,神経科学の分野においては,多重電極による神経細胞群活動の同時計測が実用化の段階にまで至っている.今後の計測技術を見越すと同時計測技術は,数百個〜数千個単位のオーダーの同時計測が可能になると思われる.これはニューロン数が非常に多い場合の解析手法を確立する必要があることを意味し,スパイク信号解析に用いられる対数線形モデルを,ニューロン数が無限大の系で扱うことは今後重要な課題になると考えられる.本研究では対数線形モデルによって記述される系を統計物理で用いられるようなイジングスピンからなる系とみなし,ニューロン数が無限におけるハイパーパラメータ推定の統計力学的解析を行なった.解析を行なうに際し,スパイク間には一様な高次相互作用を仮定し,この高次相互作用の係数をハイパーパラメータとして推定を行なった.私は観測過程において信号が反転するようなノイズが混入されるモデルを用い,相互作用のハイパーパラメータを推定する際には山登り法とEMアルゴリズムを適用した場合の解析を行なった.
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