1.研究の背景 音声コミュニケーションにおいて、分節的特徴の伝達に注目していた従来の研究だけでは、話者の発する情報が正しく捉えられないことが分かってきた。今後、人間と対話ができる機械の実用化に向けても、韻律情報などの超分節的特徴に関する基礎的なデータを蓄積、分析することが求めろれている。 2.研究の目的 本研究では、音声コミュニケーション中の感嘆詞による応答について、その音響学的特徴と文脈との関係を明らかにすることを目的とする。これらの応答は韻律情報ぬきでは情報が伝わらないに等しく、優先的に解明する必要があると考えるからである。 3.研究の成果 今年度の研究では、以下の結果が得られた。 感情的な情報を持っていない音をもとに、その発話時間長や基本周波数曲線の情報を人工的に変えた音声を作り、それらを人に聞かせると、上昇調の音は「驚き」や「疑い」といったdisagreeの情報として判断される。また、基本周波数の変化幅が小さくかつ発話時間が長い音声については、「時間をかせいでいる」「間をもたせている」「迷っている」といったhesitationの情報として判断され、下降調で発話時間の短い音は「肯定」などagreementの情報として判断される。つまり、本来感情のないはずの音に、基本周波数や発話時間長の変化を付与してやることで、聞き手が感情を読み取るということがわかった。これらの音は、実際に応答語として使われる音素を用いた場合はもちろん、コンピュータ上で合成した三角波でもほぼ同じ結果が得られた。
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