研究概要 |
脳磁図(MEG)は,脳の電気的活動によって生じた磁場を頭皮上に配置された複数のセンサーで測定する装置である.MEGは他の計測方法に比べ,時間分解能が高いという利点がある為,脳活動のダイナミクスを調べるのに有効である.本研究では,MEGで得られた多変量の時系列データに様々な統計処理を施すことにより脳の活動を調べている. ブラインド信号分離法は複数チャネルで観測された混合信号から,信号源とその混合行列を推定する手法の総称である.MEGで計測される脳活動由来磁場は非常に微弱なため,いかにノイズを除去して脳由来信号を引き出すかは重要な課題である.本研究ではこれまでに,MEGによって得られたデータのノイズ除去に時間遅れを伴う相互相関を指標としたブラインド信号分離法が有効であることを示した.特に電源ノイズや計測機器特有のノイズ,脳以外の生体由来ノイズ(眼球運動等)のノイズ除去をより効果的に行うことができた. 時間分解能の高いMEGによる計測によって近年明らかになりつつある生体現象として体性感覚野における高周波振動(High Frequency Oscillations, HFOs)がある.HFOsは600Hz前後という高い周波数帯域に加え,振幅が小さいため,この現象を捉える為には,刺激回数やサンプリング周波数を大きくし,計測に工夫が必要である.本研究ではブラインド信号分離法がHFOsの現象解明に有効であることを確認し,解析を進めている. また,MEGの解析結果は最終的にMRI画像と統合し,推定された信号源を解剖学に確認する必要がある.本研究では各被験者のMRI画像をLinuxシステム上で画像処理し,MEGの座標系における任意の切断面で表示できるよう,独自のアプリケーションソフトを開発した.このソフトを用いることにより,電流源推定時に必要な大脳皮質の等価球の位置確認,電流源の位置と方向の表示をGUIを用いて容易に行うことが出来るようになった.
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