研究概要 |
1)ヒストン脱アセチル化酵素Sir2α(SIRT1)の中枢神経系における発現 成体マウス中枢神経における発現細胞の同定を行うため免疫染色を試みた。SIRT1は側脳室のsubventricular zone(SVZ)に発現が豊富でnestin陽性細胞でも発現していることから神経幹細胞を含む未分化神経系細胞である可能性があった。そこでさらに各種マーカーとの多重染色を試みSVZ領域のtype B, C, A細胞と上衣細胞に発現していることが明らかとなった。SIRT1はrostral migratory stream(RMS)や嗅球におけるPSA-NCAM陽性細胞や海馬歯状核のnestin陽性細胞には発現が無くSVZ周辺の未分化細胞に限局した発現と考えられた。 2)Neurosphere assayにおけるSIRT1機能の解析 胎生14日目の胎児脳から線条体組織を培養して実験を行った。培地中にSIRT1の阻害剤であるnicotinamide, splitomicin, sirtinolなどを培地に投与するとneurosphereの成長が阻害されたが非投与群に対して細胞死の割合は増加していなかった。またこれらのsphereを血清を含んだ培地に移し人為的にneuron, oligodendrocyte, astrocyteへ分化させる際にこれらの阻害剤を投与する実験も行った。その結果阻害剤投与でneuron, oligodendrocyteを含有したneurosphereが著明に減少した。これらよりSIRT1が神経幹細胞の増殖や分化に重要な役割を果たすと考えられた。
|