研究概要 |
昨年度にマウスES細胞から、肝実質細胞のみならず、肝非実質細胞である血管(類洞)内皮細胞と肝実質細胞が共に分化・出現する肝組織分化誘導システムの開発に成功(Ogawa, S, Y.Tagawa, et al.,Stem Cells)した。本年度はこのマウスES細胞由来肝組織分化誘導システムが薬物動態試験への応用が可能であることを示した(Tsutui, M, ・・・, and Y.Tagawa, Drug Metabolism and Disposition 印刷中)。 まず、このマウスES細胞由来肝組織中の薬物代謝に関連するチトクロームP450遺伝子ファミリーがマウス胎仔肝や成体肝実質細胞と同様に発現していることをRT-PCRで確認した。これらの発現しているCYPが実際に活性を持っているかどうかを調べるために、マウスES細胞由来肝組織のメディウム中にテストステロンを添加し、その水酸化箇所と活性を検討した。成体肝実質細胞の水酸化パターンとは異なったが、マウス胎仔肝と全く同様に6β、16α、2α、2βが水酸化を受け、15α、7α、16βが水酸化を受けなかったことがHPLCによる解析でわかった。この水酸化活性は、胎仔肝や成体肝実質細胞に比べると、非常に高いことが確認できた。このことは、アンモニアの代謝能力と同様であり、in vitroの肝実質細胞の肝機能活性よりも個体における肝臓器官の活性に近いことが示唆された。さらに、CYPの活性は誘導されることも知られているので、フェノバルビタールを添加した後に、テストステロンの水酸化誘導能の変化について検討した。テストステロンの6βと16βに関して約2.5倍の水酸化活性の誘導が確認できた。以上のことから、このマウスES細胞由来肝組織は、CYPに関連する薬物代謝活性を十分に持っていることがわかり、肝臓の薬物代謝能力の獲得メカニズムの解析に有効であることが示唆できた。
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