研究概要 |
心臓リモデリングによる機能変化(収縮機能を含む力学的特性)を器官レベルのみならず,組織レベル,細胞レベル,そして遺伝子レベルで詳細に検討する第1段として,細胞レベルにおいて検討するため,心臓から単離した心筋細胞を用い,肥大による心筋細胞の力学的特性変化を測定する方法をはじめに確立した.肥大による心筋細胞の力学的特性変化を評価するために,心筋細胞の力学的特性を測定する装置を現有のマイクロマニピュレーションシステムと顕微鏡,高速ビデオカメラ,昨年度新規に購入した微小力測定器を組み合わせて作製した.顕微鏡は昨年度新規に購入した防振台の上に設置し,次に示す方法で細胞の収縮特性を測定するシステムを構築した.顕微鏡のステージ上で太さの異なる2つのカーボンファイバで細胞の両端を把持し,細い方のカーボンファイバの変位量を測定することにより,心筋細胞を電気刺激したときに発生する力を求めた.また,カーボンファイバを用いずに収縮させた時の細胞の短縮量,短縮速度,弛緩速度も測定し,それらのパラメータが心筋細胞の肥大化によりどのように変化するのかを検討した.肥大化心筋細胞のモデルとしてSHR(高血圧自然発症ラット)の心筋細胞を用い,その対象として一般的に用いられているWKYラットの心筋細胞との差異を検討することにより肥大化の影響を検討した.その結果,SHR心筋細胞の収縮性はWKYラット心筋細胞より有意に大きいことがわかった.また,イソプロテレノール濃度と電気刺激頻度,細胞外カルシウム濃度を変化し,心筋細胞の収縮性を変化させてもその傾向は変わらないことがわかった.以上の結果により,細胞肥大化により心筋細胞の収縮性が増加し,より多くのエネルギーを消費するように変化していることが示唆された.さらに,本研究の結果により,細胞肥大化により変化する細胞内信号伝達系路をある程度特定することができた.
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