研究概要 |
我々は,脳腫瘍摘出後の残存部の除去法として,腫瘍細胞を波長2.8[μm]のマイクロレーザで蒸散させる方法を提案し,位置決め機構の開発を行ってきた.特にレーザの焦点距離調節機構には波長532[nm]のガイドレーザを用いてプローブ先端と対象面との距離を非接触で測定するし,プローブの位置補正を行うオートフォーカス機構を開発してきた.これまで試作機を製作し,追従性等の基本性能の評価,ブタを用いたin vivo実験を行ってきた.しかし,In vivo実験において,血液による吸収が原因となり,ガイドレーザスポットの抽出が困難になる問題が生じた.そこで今年度は,脳の各組織を模擬したファントムに対し,ガイドレーザ波長及び,スポット抽出のフィルタ条件に関する評価を行い,生体の光学特性を考慮した適切なスポット抽出法を検討した. フィルタ条件に関する評価の結果,血液においては脳の実質と比較して,光が吸収され輝度の閾値が高いとスポットの抽出が不可能であった.また,閾値を下げすぎると外乱が発生し,スポットの抽出が困難となる.さらに,抽出するスポットの面積が大きいほど誤差も大きくなった.以上より,透過性による誤差を軽減するためになるべく高く,かつスポットが消えないぎりぎりの輝度閾値を用いることが望まれる.そこで,前の処理結果から次回に用いる輝度閾値を決定する,フィードフォワード的制御によって閾値をコントロールする,動的閾値変化によるスポット抽出を行った. 上記方法により,イントラリピットを混合したファントムとブタの脳表面に対するin vivo実験を行った.その結果,閾値を動的に変化させることで0.1mm程度の誤差低減が図れた.また,閾値を固定で行った場合は,スポットの取得率が30%であったのに対し,動的に変化させることで,スポットのロストがなくなった.
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