研究概要 |
新生児が示す自発的運動の空間的,および筋電図学的特性と,ハイリスク新生児の発達的予後の関係を調査することを通して,発達予後予測の客観的指標を検討するための基礎資料を得ることを目的に今課題について研究を行った.先行研究により,健常新生児の四肢自発運動は,ハイリスク新生児や神経学的異常を伴う新生児に比べバリエーションが大きいことが知られている.今回は,新生児の自発運動を2次元画像解析装置を用いた空間的要素についての解析と,筋電図による自発運動中の筋活動特性を統合的に解析し,正常新生児とハイリスク新生児の間で自発運動の様式に相違があるかどうかを検討した. 新生児の自発運動の筋電図解析については,誘発電位測定用の直径の小さな(5mm)電極を用いて試みた.対象児の大腿直筋,膝関節屈筋群,下腿三頭筋,前頸骨筋の自発運動中の筋電図を導出して解析した.自発運動の空間的要素の解析は,対象児の大転子,外側膝関節裂隙,外果に反射シールを貼り付けて側面から画像を記録する方法で試みた.2次元画像解析装置と筋電図のとの同期は,電気信号(筋電図)と発光ダイオードによる発光信号(画像解析)を記録開始時に同時に記録し,コンピュータで解析処理をする際,トリガー信号を起点にしてグラフを描くことで同期させることができた. 正常新生児とハイリスク新生児の間で筋電図学的に有意差を見いだすことはできなかった.画像解析においては,膝関節の角度変化,屈曲相と伸展相の間隔,下肢の運動速度の変動係数が正常時に比べてハイリスク児で有意に小さいことが示唆された.新生児の自発運動は,体幹の回旋や下肢の回旋など多様な運動様式を示すため,2次元画像解析で解析された運動様式の妥当性を3次元解析の結果と比較するなどして検討していく必要があると思われた.
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