研究概要 |
日常生活において、手掌や手指を用いてモノを握る把持動作は非常に重要な役割を持っている。脳血管障害によって上肢に運動麻痺が生じた場合にはこのような動作も障害されるため、これらの上肢機能を回復させる効果的なリハビリテーションの方法を見つけだすことが必要である。このため、把持動作を日常的に使用する際に必要となる,対象物および使用手の選択と運動の実行に関係する脳領域を明らかにすることを本研究の目的とした. 対象は、神経学的疾患の既往がない右利き健常大学生22名で,実験に対する承諾が得られたものとした.22名中10名はfMRI(Siemens Symphony 1.5T)、12名は近赤外線分光法(NIRS:Shimadzu OMM-2001)を用いて実験を行った。課題には(1)右手を用いて右側の装置を使用、(2)右手を用いて左側の装置を使用、(3)左手を用いて左側の装置を使用、(4)左手を用いて右側の装置を使用の4課題とし、これらの課題時の脳活動をfMRI、およびNIRSを用いて測定した。課題(1)〜(4)は、被検者に提示した視覚刺激によって指示し、ランダムに行わせた。なお、NIRSの測定部位は前頭葉から頭頂葉にかけての42chとした。fMRIのデータ解析には画像解析用ソフト(SPM99)を使用し、課題(1)〜(4)の比較から,それぞれの課題に関係した脳活動を求めた。NIRSについても同様に,各課題時の脳活動について比較した。 上記の4課題時に、運動前野、補足運動野、前補足運動野などが賦活することが明らかとなったことから、これらの領域が運動時に「使用する手」に関する情報と「対象物」に関する情報を統合するのに重要な役割を担っている可能性が示唆された。一方、これらの活動に利き手による差異があるかについても検討を行ったが、これについては明らかにならなかった。
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