研究概要 |
本研究では,第一に,「関係論的な学習観」の中核として位置づく,「自己(学習者)」と「他者(人・モノ・自然など)」の関係性,すなわち「かかわり合い」に焦点をあて,その必要性や成り立ちについて考察を行った。そこでは,「かかわり合い」とは,「働きかけられるかかわり(受動的志向性)」によって,「働きかけるかかわり(能動的志向性)」がたち現れることで成り立っていることが明らかにされ,現在の学校教育・学校体育においては,積極的な「受動的志向性」に焦点をあてた授業を構想することの必要性が浮かび上がった。また,「かかわり合い」の成り立ちから導き出した,5つの局面(〔情報〕〔傾聴〕〔受容〕〔発動〕〔表現〕)を観点にしながら学習者のからだが置かれている状況・状態を見定め,授業を構成していくことの重要性が明らかにされた。 第二に,「かかわり合い」の成り立ちを重視した授業(大学教育実践研究:小学校専門体育,小学校教育実践研究:三重県四日市市立K小学校(主として体育授業))を構想し,実践を行った。そこでは,積極的な「受動的志向性」に一貫して光をあてたテーマ設定,並びに「かかわり合い」の成り立ちから設定した「〔情報〕局面〜〔表現〕局面」に基づいた授業の構成は,受講生や子どもの「いまのからだを開く」「他者の関係を拓く」「運動や学習の意味を劈く」ことに,深く影響を与えていることが考察された。また,新学習指導要領に明記されている「心と体の一体」化の成立のためには,他者(人・モノなど)の存在は欠かすことができず,他者からの働きかけこそが<わたし=からだ>を揺さぶり,成長を促してくれることが,授業実践によって検証された。 以上のことから「かかわり合い」の成り立ちから導き出した視点は,「関係論的な学習観」に立脚した体育のカリキュラムと授業を構想していく際の一つの手がかりとして,有効性があることが検証された。また,「かかわり合い」の成り立ちから導き出した各局面の相互性を明らかにすることで,関係論的アプローチによる体育授業の構想のための具体的ポイントについて提示した。
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