研究概要 |
半月板や前十字靱帯の損傷による手術に伴い,大腿部では筋萎縮や機能低下が起こる.筋萎縮については"内側広筋"が著しい萎縮を起こすと言われている。ところが身体不活動や加齢による筋萎縮では,大腿四頭筋において内側広筋が特異的に萎縮する事実は報告されていない(Akimaら1999,2000,Trappeら2001).そこで,本研究では膝関節手術後の大腿部の筋萎縮および筋構能について調べ,萎縮したヒト骨格筋の機能と形態について検討することを目的とした.被検者は半月板損傷により膝関節手術を受けた患者のべ33名であった.被検者の患側および健側の大腱部における11枚のMR画像から大腿四頭筋,ハムストリング,内転筋群の筋体積を算出した.等尺性膝伸展筋力(MVC)を測定した.また,MVCの30%の負荷に対する等張性の膝伸展運動(10回^*5セット,セット間1分休息)を行わせ,運動中には表面筋電図を得た.健側と比較して患側の筋体積は大腿四頭筋のみ有意に低値を示し,ハムストリングおよび内転筋群には筋萎縮は全く認められなかった.大腿四頭筋の各筋毎の比較では,内側広筋が大腿直筋と比較して有意に筋体積の低下率が大きかったものの,他の筋間での比較では統計的な差は認められなかった.患側と健側のMVCはそれぞれ374±194N,512±205Nで統計的な差が認められた.しかしながら,相対的に同一負荷(つまりMVCの30%の負荷)で運動を行った時の筋電図放電量には患側と健側の統計的な差は認められなかった.以上の結果から,半月板損傷の患者では大腿四頭筋のみに筋萎縮が起こり,各筋はほぼ均等に萎縮し,また筋機能の減退は最大筋力の低下と一致していた。
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