研究概要 |
昨年度に引続き、測定システムの装置・ソフトの修正作業、および精度確認の予備実験を実施した。このシステムは現時点でほぼ完成に至り、いくつかの本実験より本研究申請時の目的に沿ったデータが得られ始めている。それらの一部は論文および学会等に発表公開し、議論を重ねてきている。以下に研究実績の概要を記す。 自転車エルゴメーターを用いた個人の体力評価法が普及している。この際の設定負荷はクランクに対して直角方向の力(:接線方向の力)のみを基に設定されている。しかしながら、実際には運動者はそれ以外の方向へも力を発揮しているので同じ設定負荷(接線方向の力に基づいた負荷)であっても、ペダリングスキルに個人差があれば、実際に発揮する力(:ペダルへの合成荷重または全踏力)にも個人差が生じる。このことは従来の設定負荷-生理応答関係より求める体力評価値の妥当性を損なわせる可能性があると推察している。本研究では、20歳代男性7名を対象に、ペダルに対する全踏力およびクランクに対する接線方向の踏力より仕事量(30,50,70%Vo2max)を求めた。Vo2と両仕事量の関係からもとめた体力評価値は、必ずしも一致しなかった。このことより従来の評価法により妥当な評価がなされていない個人が存在することが証明された。その要因を探るために、ペダリングスキルの指標として力の効率指数(=接線方向の踏力/全踏力×100)を求めると、明確な個人間差が現れた。また、力の効率指数は相対負荷増加に伴い、増加する傾向にあったが、負荷増加に対するその変化(Vo2-仕事量関係の回帰直線傾斜)にも個人間差が認められた。本研究の被験者集団とは異なる性、年齢の母集団では更なる個人間差が広がることも予測でき、今後の調査により従来の体力評価値の修正法に関するアプローチが可能になると考えられる。
|