研究概要 |
本研究においては,昨年度までに小中学生を対象として実施した,心理的ストレス,学校不適応,攻撃行動,および登校意欲に関する実態調査の結果を踏まえて,児童生徒の不適応行動の変容を目指したストレスマネジメントを実施した.その際,社会的スキル訓練(児童生徒個人の行動的変容)を中心とした介入を実施する小中学校,および,セルフ・エフィカシーの向上(児童生徒個人の認知的変容)を中心とした介入を実施する小中学校をそれぞれ選定し,ストレスマネジメント実施の効果を比較した.ストレスマネジメントプログラムは,昨年度までに実施したプログラムに適宜修正を加えて作成した.プログラムの効果測定においては,主観的なストレス反応,学校不適応感,攻撃行動,登校意欲を中心とした質問紙調査(自己評定),教師による他者評定,第3者による行動評定などを多角的に用いた.その結果,ストレス反応,学校不適応感に関しては,小学生,中学生ともに,社会的スキル訓練が軽減効果を持つことが示された,また,攻撃行動に関しては,小学生のみ社会的スキル訓練とセルフ・エフィカシーの向上が軽減効果を持つことが示された.しかしながら,他の指標においては顕著な効果が認められなかった.これらの結果を総合すると,小中学生を対象とした場合,行動的変容は一貫したストレスマネジメント効果が認められた一方で,認知的変容は条件設定などの要因によってその効果がさまざまであることが示された.逆に言えば,これまでには比較的困難であると考えられてきた小学生を対象とした認知的変容によるストレスマネジメント効果も,プログラムを工夫することによってその介入効果が期待できると考えられる.今後は,学校を基盤としたストレスマネジメントプログラムの定着に向けた諸問題の解決を念頭に置きながら,より高い効果の期待できるストレスマネジメントプログラムの修正を考えていく必要がある.
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