研究課題
若手研究(B)
2-Chloro-4-methylthiobutanoic acid(CMBA)は、サンマの開きを塩、亜硝酸と共に酸性条件下で反応させることにより生じる変異原物質で、Salmonella typhimurium TA100、TA1535を用いたAmes test(-S9)において変異原性を示す。この反応液はラットの胃に腺胃癌を発生させることも報告されている。しかし、その作用機序の詳細は明らかにされていない。本実験では、CMBAのDNA傷害性を検討するため、CMBAをデオキシグアノシン(dG)とリン酸ナトリウム緩衝液中で反応させ、生成物の解析を行った。37℃、1〜14日間の反応により2種類の付加体が徐々に生成することがわかった。それぞれ単離して構造解析を行った結果、N7-(3-carboxy-3-methylthiopropyl)guanineとN7-(1-carboxy-3-methylthiopropyl)guanineと同定された。これらのN7-guanine付加体は、その構造からCMBAの環化により生じた中間体1-methyl-2-thiethaniumcarboxylic acidがdGにより求核攻撃を受けてN7-dG付加体となり、その後、分子構造が不安定性なため脱塩基を起こして生じたものと考えられた。本実験により、CMBAがDNAを構成するヌクレオシドと直接反応して付加体を生成することが明らかとなった。この結果はCMBAのDNA傷害性を示唆するものである。DNA上に生じたN7-dG付加体は、N-グリコシド結合が不安定なためguanineを遊離してDNA上に脱塩基部位を生じさせることが知られている。CMBAの変異原性は、この脱塩基部位の修復時の誤りによって引き起こされると考えられた。
すべて 2005
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Chemical research in toxicology 18
ページ: 1755-1761