研究概要 |
食物アレルギー発症の第一段階である腸管からのアレルゲン透過を抑制することはアレルギー予防に効果的である。申請者は前年度までにアレルゲン腸管透過抑制成分としてペプチド系とポリフェノール系の2タイプの活性成分を明らかにした。さらにこれらの結果から、タンパク質およびポリフェノール含量が高い食品にプロテアーゼ処理を行えば、ペプチド系とポリフェノール系の両者の活性成分を含む抗アレルギー食品を創製することが可能であると考え、アレルゲン腸管透過抑制食品である、トリプシン処理ゴマ抽出物(ETS)を製造するという一連の製造工程を確立した^<1)>。本年度はTSEのアレルギー腸管透過抑制とは別の抗アレルギー作用として、肥満細胞の脱顆粒抑制に着目し、TSEに肥満細胞の脱顆粒抑制があるかどうかを検討し、活性成分を単離・構造決定することを目的とした。 ラット好塩基球性白血病細胞株RBL-2H3を用い、β-ヘキソサミニダーゼ(酵素活性測定法)およびヒスタミン(HPLC on-column法)の遊離からIgE依存性脱顆粒度を測定した。酵素処理ゴマには高い脱顆粒抑制活性が認められたので、逆相HPLCにより活性成分を単離した。NMRおよび質量分析の結果から、活性成分の1個をトリプトファンと同定した。ゴマにはもともとトリプトファンは遊離の状態で存在しているが、酵素処理の条件下(微アルカリと40℃の加温)で活性成分は有効に可溶化されることが明らかとなった。トリプトファン濃度0.1mMで、β-ヘキソサミニダーゼの放出を20%阻害した。もう1種の活性成分は検討中である。 ^<1)>Biosci.Biotechnol.Biochem.,68(2),300-305,2004.
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