研究概要 |
前年度までの調査結果で,食生活及びライフスタイルには情報・経済的な影響のほか,地域・家庭文化が大きく影響していることがわかった.そのため本年度は,食生活のなかで特に地域の伝統文化が反映している伝統菓子に焦点をあて,これらを通して食生活やライススタイルの実態の理解をより深め,これまでの分析結果を踏まえ諸問題点と対応策について検討した. 調査地区は,タイ北部の都市,農村,山村である.2005年8月,文献・資料収集のほか,児童生徒,チェンマイ職業短期大学教授,小・中学校の家政科専門教員,一般住民,山地民に対して,面接聞取り調査を実施した. 児童生徒には,属性:居住地域,年齢,性別,両親の職業,食生活:摂取時間,回数,摂取の場所,共食者,摂取したもの,伝統菓子と袋菓子の摂取頻度,選択理由.家庭内での伝統菓子作成の有無,誰といつ,何を作るのか,ライフスタイル等:起床就寝時刻,仏日に寺へ行く頻度,親の手伝い,ミークワームスック(幸福感)の有無等について,教員や一般住民等は,属性,食生活と伝統菓子との関わり,よく作る伝統菓子ついて,質問した. この結果,伝統菓子を家庭でよく作る児童生徒は,規則正しい食生活,仏日に寺へ行き,親の手伝いをするというライフスタイルであった.伝統菓子摂取と幸福感には正相関があり,特に都市の児童生徒にその傾向がみられた.教員,一般住民からは,「伝統菓子は,みんなで長い時間,労力をかけ協力する必要がある,この作る行為に意味がある」という. 伝統菓子の見直しは,すなわち経済化,情報の進展により変容した生活を見直す,良いきっかけになることが得られた. この結果を報告した学校では,家庭科に伝統菓子の作り方を教えるようになり,従来あった伝統を維持・継承する運動に新しく加えられた. この調査研究については,日本家政学会(5月,福岡)でポスター発表し,一連の研究は同学会にて奨励賞を受賞した.
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