研究概要 |
本年度の目的は,氷河流動モデルのチューニングパラメータ用に使用する現存の氷河の流動を観測し,モデルに適用すること,氷河地形から復元した日本列島の最終氷期の氷河について質量収支を検討し,これと現在の気候条件とを地理情報システム(GIS)上で組み合わせて検討し,日本列島の氷期の古環境を復元検討することにある。この目的に基づいて,以下の調査・検討を行った. (1)氷期の日本と同様に,相対的に温暖・多雪環境にあるパタゴニア地域の氷河に於いて,チューニングパラメータ用の氷河流動の観測,氷河末端変動の観測を行い,解析を行った. (2)気象庁から公表されている気候値メッシュデータを利用して,現在の気候環境と氷河地形の分布との関係について検討を行った. (3)日本アルプスの氷河地形について,現地調査を行い,その分布範囲の検討を行った. これらの解析のうち,(1)については,GPSを用いた高精度な反復観測を行うことができ,充分な成果が得られ,モデルとの関係の検討に入ることができた(青木ほか,2005など).また,国内外の研究会等で発表した.(2)については,現段階においては充分な解析に至ることができなかった.今後の課題と考える.(3)については,飛騨山脈白馬岳周辺に於いて現地調査を行い,氷河末端付近に氷河変動と関連すると考えられる堆積物を見いだした.これについては,研究会等で議論を行い,今後継続的に検討する課題であることを確認した.さらに,昨年度までに作成した氷河地形データベースとの関連性についても,合わせて検討した.
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