研究概要 |
本年度は,昨年度に得られた結果を基に,複数の機種・地形条件の異なる複数の地域を対象に測量を実施した.その結果,昨年度来の課題であった鉛直方向の誤差精度については,観測日およびGPS機器個体によって異なることが判明した.気圧によって生じていたバラツキについては,気象条件ごとに分類して誤差を解析したところ,低気圧通過直後に測定したものが誤差が特に小さかった.一方で湿度の低い晴天の日は相対的に誤差が大きかった.また,GPS測量時に併せて測定した気象庁検定済みの気圧計の指示値を基準に,GPSに示された気圧との差を補正することによって,標高の誤差は最小で1m程度まで改善できることが明らかになった,しかし,測定日が数日に及んだ場合,上述した気象条件の違いによる測定値のバラツキを補正することは,かなり難しいことから,対象地域においては同一日に測定を行うことが必要である. 複数の地形条件下において行った測定の結果,地形勾配が平坦な地域よりもある程度の標高差のある山地地形のような地形での測定の方が,相対値としては有効であるという結果になった. GPS機器個体による値の違いは予想外に大きく,同一機種でも個体によって指示値が異なることが判明した.このことから,測定の際には,各個体ごとに気圧計による観測によって得られた値を用いて補正式を作成しなければならないことも明らかになった. 以上のように,廉価版GPSを用いた地盤標高の測定については,気象条件や機器による制限がかなりあるものの,正確な値を示す気圧計を併用し,個体ごとに補正式を作成することによって,地下水面標高や地盤標高分布の解明に向けて使用可能であるという結論を得た.
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