研究概要 |
全国40カ所の浄水場や一般家庭などの給水栓から水道水をサンプリングして、変異原性を測定した。変異原性は、Salmonella typhimurium TA100株を用いたAmes試験により測定し、試験は代謝活性剤を用いずにプレインキュベーション法にて行った。その結果、水道水の変異原性は、検出下限界値以下〜16,000net rev./Lの範囲であった。ただし、16,000net rev./Lの著しく高い値が観測された水道水は1カ所の浄水場のみであり、その値を除くと最高値は6,400net rev./Lとなり、1992年に行われた全国調査の最高値と比較して2,800net rev./L低い値であった。分布を比較するために累積度数分布を求めたところ、1992年の全国調査の結果よりも3,000net rev./L以上のサンプルが減少し、今回の調査の方が変異原性が低く分布していることが明らかになった。また、原水の変異原性物質生成能(Mutagen Formation Potential, MFP)を測定した結果、検出下限界以下〜25,000net rev./Lの範囲であった。また、浄水処理工程における変異原性の平均削減率は65%であった。 変異原性が低下した理由を検討した結果、前回の調査より原水のCODが高いサンプリングポイントが数カ所存在したこと、水道水の単位炭素量あたりの変異原性(変異原性/TOC)に有意な差は認められないことから、変異原性が低かったのは高度浄水処理の導入が一つの理由と考えられることが明らかになった。このため、1992年以降に高度浄水処理が導入された地域と導入されなかった地域で変異原性の平均削減率を比較したところ、導入された地域では60%、導入されなかった地域では10%と有意な差が現れ、高度処理導入による変異原性削減の効果が確認された。また、遊離残留塩素濃度の低下が認められ、遊離残留塩素濃度の管理技術の向上も理由の一つと考えられた。
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